弁護士インタビュー

弁護士会の委員会活動[後編](弁護士 石野百合子)

弁護士会の委員会活動 [後編]

では次に、高齢者・障害者の権利に関する委員会について、どのような活動を行っているのか教えてください。

こちらは名前の通り大きく分けて、高齢者に関する業務と、障害者に関する業務の2つがあります。
高齢者の業務に関しては、現在一番内容が多いのが成年後見に関する業務かと思います。その他、大変残念なことなのですが、高齢者虐待というような事も起きてしまっています。一緒に住んでいる同居の子どもが親を虐待してしまうような、児童虐待の逆のケースのような事も起きています。そういった分野にも対応しています。
あとは障害者の方の権利を守るために出張法律相談をするなどといった業務も行っています。

その中で特に石野先生が携わっている分野は何ですか?

主に成年後見の研修ですね。弁護士会内の委員会活動ですので、活動内容は弁護士向けの研修活動なども多く含まれております。成年後見開始の申立てがなされた場合に、成年後見人を決める必要があるのですが、この場合、成年後見人の候補者として弁護士会宛てに推薦依頼が来ることも多くありますので、弁護士会宛てに推薦依頼が来た場合に、成年後見の専門性を持った弁護士が職務に当たれるかどうか、というところが成年後見人弁護士の質の担保という点で重要になっており、担当する人が等しく知識を持てるように研修を行っていくという活動に携わっております。

弁護士 石野百合子 インタビュー写真6

では最後に、犯罪被害者支援委員会の活動について教えてください。

殺人や傷害、性犯罪、交通事故など、不幸にも犯罪に遭ってしまった方々がたくさんいらっしゃるわけですけれども、そういった事件の被害に遭われてしまった際に、被害者の権利として手続関与できることが刑事手続の中で認められています。被害者の方は、「犯人がつかまりました」とか、「犯人が起訴されました」とか連絡を受けるわけですが、「事件についてもっと知りたい」「もう関わりたくないけど、弁護人から被害弁償がしたいと連絡がきて困る」とか、皆さま様々なお気持ちを抱えています。私たち犯罪被害者の支援をする弁護士は、被害者の方に今後どういった事が手続き上予想され、どういった事が被害者の方にできるのか、というのをご説明した上でサポートする業務をしております。

先ほどの子どもの権利委員会に関しては、少年が加害者になってしまった場合というものも一定の割合を占めると思うのですが、犯罪被害者支援委員会はそれとある意味対局にあるような委員会だと思うのですが、それに関して石野先生としては個人的な思い入れとしては、いわゆる加害者側なのか、被害者側なのか、どちらにあるのでしょうか?

私としては特にどちらの立場だけに寄り添ってやるということを決めているわけではなく、その時の自分の担当する本人に対して向き合っていくような姿勢でやっていきます。弁護士によっては加害者側だけをやる方もいますし、被害者側だけをやるという方もいますが、私個人の考えとしましては、両方の立場から複合的に物事を見ていくことによって、自分が加害者側に付いたときには被害者側はどういうことを感じるであろうかということも念頭に置いた上で、丁寧な対応ができるのかと思いますし、それは反対になった場合にも同様だと考えております。

弁護士 石野百合子 インタビュー写真7

これらの委員会活動を通じて、印象的だった事件や出来事はありましたか?

たくさんありますが、法律の問題に直面して弁護士のところへ来る方々はその段階では前向きな状況ではなくて、困難な状況で何かクリアしなければならない課題を抱えている方々が多いわけです。ただ、解決をしていく中で前向きになっていただけるケースもたまにあって、児童虐待を受けてしまって子どものシェルターに入ってしまった子どもの代理人していたことがあるのですが、その子に関しては両親との縁を切って再スタートを切り、今は幸せに生活している様子を年賀状等で今でも報告してくれています。あと、犯罪被害者の支援においても、ひどい性犯罪の被害に遭ってしまったのですが、現在は幸せな結婚生活を送り子どもにも恵まれたというようなお知らせをいただき、大変嬉しく思いました。

弁護士 石野百合子 インタビュー写真8

石野先生にもお子さんがいらっしゃいますよね。ご自身のお子さんのこれからの成長に関して、先生としてはどういった考えで子育てをしていく意向でしょうか。

この仕事をさせていただいた事によって、今まで自分がいかに恵まれた環境で育てられてきたかという事を感じることが多いです。また、愛情を持って接する中でも親子間で軋轢が生じてしまうケースもあります。今までお仕事させていただいた事で感じたことは、やはり子どもも別の人間ですので、できるだけ本人の意思というのを丁寧に確認していきながら、自分がやろうとしていることがしつけを超えて押しつけになっていないかとか、そういったことを日々セルフチェックしていき、親としては「自由にやっていいよ。困ったらいつでも帰っておいで。」というスタンスで、後ろから暖かく見守っていきたいと考えています。

以上